호위사령부
◆護衛司令官李乙雪元帥(96年2月〜)/政治委員崔ソンス中将?/参謀長ユン・ジョンリン上将?
◆司令部:平壌特別市牡丹峰区域七星門洞
◆護衛司令部の戦闘兵力は、師団2個、旅団2個
少し前まで護衛司令官は、1995年10月に任命された張成禹大将と知られていたが、最近の資料には、1996年2月に李乙雪元帥が護衛司令官に任命されたという(写真は、李乙雪元帥)。
護衛司令部は、60年代以前から労働党護衛局の形態で存在するが、80年代に護衛司令部に発展し、1983年には、平防司、警備司等を全て統合指揮する兵力12万の護衛総局に巨大化した。一部資料を見れば、90年代以降(又は金日成死後)、再び平防司、警備司等を分離して、護衛司令部体制に還元したという(護衛司令部の沿革と変遷過程に対しては、資料毎に少しずつ差異がある。)。しかし、各種資料上では、90年代にも護衛総局という表現がしばしば見られる。正式名称が依然護衛総局である可能性があるようである。☞過去、筆者は、護衛司令部が現在の正式名称で、護衛総局は、慣行的に以前の名前をそのまま呼称するものと判断した。しかし、2000年10月4日、朝鮮中央放送は、北朝鮮将領級昇進人事において、「護衛総局警衛金スンボム」を少将から中将に昇進させたと報道した。これを土台に見れば、正式名称が護衛総局である可能性がより高いようである。さもなければ、近年に護衛総局に名称を再び変更したのかも知れない。
北朝鮮の国家組織体系の編成上、人民武力部傘下機関となっているが、人民武力部、国家安全保衛部、社会安全部等と同様に、独立機関として労働党の直接的な統制を受けている。護衛司令部に対する指揮、指導を中央党組織指導部が担当し、警護事業の関連指針下達とこれに対する護衛司令部の報告を組織指導1部1課が遂行している。
@護衛司令部の任務
護衛司令部の主任務は、金正日に対する車両警護、密着警護時の護衛業務遂行と、官邸及びその家族に対する別荘警戒及び管理と金正日の専用農場を管理し、金正日とその家族に供給される各種物品に対する
検索等を実施することが主任務である。そして、護衛司令部では、金正日の身辺安全面に反旗を翻す者達に対する調査任務を遂行している。特に、政権保衛組織である国家安全保衛部、社会安全部等、核心機関に側近の人物達を
押しなべて配置、国家政策決定過程にこれら核心機関である軍エリートが金正日の指針を受け、積極参与できるように制度化している。
金正日は、金聖愛がその家族である金ジョンガク、金ソンホ等を重用するや、
これら個人の崇拝的性向を見て、当時、護衛局長だった全文燮と組織指導部中央指導部長だった張成沢にともかく調査するように指示したことがあり、また、呉克烈の軍隊内政治指導員制度の廃止問題等の言動を不純分子と見て、これを護衛総局で調査するように指示したことを見れば、調査業務も遂行していることが分かる。
A護衛司令部の編制(警護体系については、金正日の警護体系参照)
護衛司令部隷下には、自体直轄兵力以外にも、重武装部隊である2個師団と2個旅団が所属しているという。一部資料において、護衛総局から護衛司令部に改編されたのを部隊拡張として説明する。しかし、「護衛総局時代には、平防司、平警司も護衛総局所属だったが、現在の護衛司令部体制下では、平防司、平警司が別途司令部に分離された」という主張を信頼する場合、護衛司令部への改編は、むしろ部隊縮小と見るのがより正確なようである。護衛司令部は、基本的に人民武力省系統の正規軍指揮系統と分離されており、国防委員会直属部隊だという。
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1総局:護衛計画及び組織と護衛業務の総括指導。局長は中将(チョ・ソンミン中将?) | ||||||||||||||
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2総局:護衛行事に調達する物資生産と専用別荘の管理 | ||||||||||||||
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3総局:護衛司令部隷下機関の物資供給 | ||||||||||||||
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4総局:党書記兼国防委員長の専用別荘工事等 | ||||||||||||||
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223処:錦繍山議事堂管理 | ||||||||||||||
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55処:戦時指揮所 | ||||||||||||||
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護衛部(1総局所属?)
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護衛司令部の編制に対しては、資料毎に内容の差異が甚だしい。比較的詳細な資料は、1994年、金永三大統領在任時の南北頂上会談発表当時、ニュースメーカーの報道内容、月刊北韓に掲載された前労働党組織指導部幹部出身の金ジョンミン氏の証言、内外通信資料等を入れることができる。ニュースメーカーの報道(94年)内容には、護衛総局は、護衛1局、護衛2局、護衛3局で構成されるといい、護衛1局が実質的な警護部隊で、護衛2局と護衛3局は、金父子所要物資補給等を担当する部隊という内容である。この内、護衛1局所属直轄兵力は、約3,000名だという。この中で、護衛1局は、更に1、2、3護衛部に分けられるが、1護衛部が金父子の警備、2護衛部が党中央委及び主席宮、3護衛部が政府要人を警備するという。金ジョンミン氏の証言(98年)によれば、1護衛部が金父子を警護する部隊で、2護衛部が金父子の所要物資補給、3護衛部がその他主要要人警護を担当しているという。これに反して、内外通信資料(93年〜98年)は、一貫して1護衛部が金日成、2護衛部が金正日を担当していると言及している。内外通信と月刊北韓の記事によれば、護衛司令部護衛1局長は、チョ・ソンミン中将だというが、この護衛1局が護衛1総局を意味するものなのかは明らかではない。内外通信と月刊北韓の記事によれば、1護衛部は、金日成担当であり、現在は、
錦繍山議事堂において金日成の死体を護衛しているといい、2護衛部が今も金正日を担当しているという。生きている者ではない死体を護衛させられた1護衛部は、2護衛部に比べて待遇が悪く、1護衛部の士気が大いに沈滞した状態ともいう。各種報道を総合してみれば、上の護衛司令部編制外にも、親衛隊、1護衛連隊、5号宅護衛部、別荘護衛連隊、行事護衛部、護衛運輸部、後方局等の名称も見られる。護衛司令部所属という師団2個、旅団2個が平防司と平警司所属兵力を含めた数値なのかという可否は明らかではない。また、1護衛部と2護衛部と別途に師団2個、旅団2個があるのかも、明らかではない。上の本文の説明は、国内の警護関連月刊誌に公開された内容を基礎に筆者が若干の修正を加えたものである。正確な編制は、もう少し資料を収集、比較、検討してみなければならないようである。
B身辺安全秘書室
◆身辺安全秘書室(別名安全護衛室?、護衛安全室?)
◆秘書室長姜サンチュン(党部長級以上職位:韓国の長官級)
月刊北韓の報道によれば、実際、金正日に最も近接警護するのは、護衛司令部兵力ではなく、労働党身辺安全秘書室所属要員だという。身辺安全秘書室は、最側近護衛を担当しており、安全担当要員20名で構成されている。実際の警護作戦では、護衛司令官ではなく、身辺安全担当秘書
姜サンチュンが全ての警護兵力を総指揮するという。所属系統は、労働党中央委書記室傘下である。この報道が正確だとすれば、身辺安全秘書室と護衛司令部の関係は、第4共和国時代の青瓦台警護室と首都警備司令部の関係と似ているといえる。
しかし、金正日の近接警護責任が身辺安全秘書室にあるのか、護衛司令部にあるのかは、明らかではないようである。2000年、金大中大統領の平壌訪問時、朝鮮日報に報道されたところによれば、金正日の警護は、護衛部長−責任副官−副官(5〜6名)−警護員体系で構成されているといい、責任副官は、少将級(過去には大佐)だという。現在の責任副官は、84年以来、公開行事時、金正日を密着警護しているが、105師団政治委員出身だという。ここでの護衛部長は、身辺安全秘書室よりは、護衛司令部護衛部系列を意味するものと見られる。そのように見ると、近接警護も護衛司令部の領域のように見える。さもなければ、近接警護に投入される人員は、護衛司令部所属でも、指揮は、身辺安全秘書系統で行使することを意味するのだろうか?
C216部隊
最近分かったところによれば、金正日の身辺警護強化のため、216部隊の秘密親衛隊約2,000名を作り、この中で、精鋭要員200名は、常時近接警護を行うという。216部隊の秘密親衛隊中で、密着警護を実施する要員中、20余名は、中国の 固有武術であるカンフーを練磨した高段者であり、この他の要員も、イラン等の地で特殊訓練を練磨した優れた要員である。この秘密親衛隊に選抜される要員は、朝鮮戦争の 孤児や革命遺家族の子女の内、万景台革命学院と康盤石革命学院出身者達で、対南・対米敵愾心と憎悪心に満ちている者達である。この要員は、「偉大な指導者同志を 擁護保衛する親衛隊として、生きても栄光、死んでも栄光という磐石のような信念を持って戦うことを厳粛に宣言します」という誓約文に誓約を行っている。
最終更新日:2004/03/19